5分で読むムーミン小説:ムーミン谷の十一月(2)

公開日:2018年4月22日  更新日: 2020年01月02日 関連分類:

フィリフヨンカが屋根で四つ這いの状態で体を少しずつずらしながら窓のほうに近づこうとしているとき、急に風が吹きつけて窓が閉まってしまいました

 

開こうとしても丸っきり手をかけるものがなくつるつるで掴んで引っ張ろうにも引っ張ることができません。

 

フィリフヨンカはヘアピンを使って、それで窓をこじ開けようとしてみました。しかし、ヘヤピンはぐにゃっと曲がってしまいました。

 

雑巾!そうだ、雑巾は窓縁のところにかけていました。

雑巾の端が窓の縁からほんの少し外にはみ出しています。

 

フィリフヨンカは用心深く雑巾の端を掴み、引っ張りました。

切れがちぎれませんように……頼む……

 

※写真出典書籍:『ムーミン谷の十一月』講談社、トーベ・ヤンソン/作・絵、鈴木徹郎/訳、1984年発行

 

ようやく窓を開け、転がり込むように窓の中に飛び込みました。

 

「死ぬなんてとんでもない。私は死にっこないんだから」とフィリフヨンカは思いました。

 

それからフィリフヨンカは家中のカーテンを引き下ろし、衣装戸棚を開きました。

中にスーツケースが置いてありました。

 

それを目に留まった時、やっとフィリフヨンカはこれからどうすればいいのかわかってきました。

 

よその家を訪ねるのです。人に会いに行くのです。

 

そういう人たちって、そう、ヘムレンさんではないわ。ミムラ姉さんでもないわ。

違う違う、ムーミン一家の人たちよ。

 

スナフキンのハーモニカと五つの音色

秋も末になり、スナフキンは南へ南へと旅を続けていきました。

 

ある日の夕方、スナフキンはハーモニカをリュックから取り出し、この8月にムーミン谷のどこかで彼の頭にひらめいた五つの音色を思い出しました。

 

五つの音色で雨の曲を作ろうと思ったらあの五つの音色が出てきませんでした。

じっと待てば出てくると思ったが、出てきませんでした。

 

あの五つの音色はムーミン谷に置いてけぼりになったんだとスナフキンは思い、ムーミン谷に帰らなくてはならないと思いました。

 

※商品ページ:幻の ムーミン シート: スナフキン / ヴィンテージ品 / フィンランド 北欧

 

自分のことが嫌いなヘムレンさん

ヘムレンさんは毎日毎日繰り返し繰り返し過ごしている自分が嫌いです。

 

ヘムレンさんは自分のヨットを持っていますが、操縦することを習う時間もなく、いまだにヨットを海に出したことがありませんでした。

 

この嫌な思いを変える方法を一生懸命考えているうちに、大昔のある遠い夏にあったムーミン谷の思い出が蘇りました。

 

ムーミンの家の南の客間です。あそこで浅めを覚ました時に楽しくてたまらかなったことでした。

窓は開いていました。そよ風が吹くと白いカーテンがひらひら風になびきました。

何をするにも急ぐ必要がありませんでした。

ムーミンパパのことは、いくらかはっきり覚えていました。

ムーミンパパのヨットのことも覚えている気がします。

 

ヘムレンさんはリュックも傘も待たずに家を出ていきました。

 

ヘムレンさんはムーミン谷、ムーミン屋敷にやってきました。

ムーミン屋敷はどこかいつもと違っていました。

 

「そうだ!今は夏じゃなかったんだ。秋だったんだよ。どう?」とヘムレンさんが大声をあげました。

なんとなくムーミン谷というといつも夏のこときり考えていなかったんです。

 

何回声かけてもムーミン屋敷の中から返事がありませんでした。

 

魔法の水晶玉

ホムサ=トフトはムーミン谷に行ったことが一度もないが、迷子になりませんでした。

 

森の匂いは素敵でした。ヘムレンさんのヨットよりもっといい匂いでした。

 

※写真出典書籍:『ムーミン谷の十一月』講談社、トーベ・ヤンソン/作・絵、鈴木徹郎/訳、1984年発行

 

川が目の前に近づき、川に橋がかかっています。

橋を渡ると庭がありました。

ホムサのお話に出てきた庭にそっくりでした。

 

薪小屋に上がる階段にヘムレンさんが斧を腕に抱えて腰かけていました。

「やあ、僕はムーミンパパが来たと思ったよ。みんなどこへ行ったか知ってるかい?」とヘムレンさんは言いました。

 

「そんなこと知らないよ」とホムサは答えました。

 

ヘムレンさんはホムサに薪を台所に運んでもらうようにお願い、自分はコーヒーを沸かしました。

 

コーヒーを飲んだ二人は家を出て庭にある水晶玉の前に来ました。

水晶玉はムーミン谷の光をみんな集まっていました。

谷間に住んでいるものの姿はいつも水晶玉に映っていました。

 

その後、二人は家に戻り、食糧部屋に入り、航海用の乾パンを見つけました。

ある日にヘムレンさんも自分のヨットに乗って海に出たいと言いました。

 

 

トフトは家を出て水晶玉のところに行き、覗き込みました。

 

一番奥にぽつんとほんのかすかに青い色の点みたいな光がともりました。

パかっと光って消えました。

またピカっと光って消えました。

 

灯台の明かりみたいに、同じ間をおいて光ったり消えたりしました。

 

その遠い光は何だろうとホムサは思いました。

 

台所にいるヘムレンさんは何者かが応接室に入ってきたと気付きました。

「そこにいるのは誰だ!」

 

「お前さんなんかにゃ教えるもんかね」と、とてもしゃがれた気味の悪い声が跳ね返ってきました。

 

続く。

 

※参考書籍:『ムーミン谷の十一月』講談社、トーベ・ヤンソン/作・絵、鈴木徹郎/訳、1984年発行

 

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