5分で読むムーミン小説:ムーミン谷の十一月(7)

公開日:2018年4月27日  更新日:2020年1月1日  関連分類:

一日中雪が降りました。

 

ご先祖様としゃべりたくてスクルッタおじいさんは腰を掛けて話し始めました。

「こんにちは。雪ですね。どうしてちっぽけなことしか起きなくなったんだね。どうしてみんなちっぽけになっちまったんだね。」

しかし、スクルッタおじいさんが何を話しても、ご先祖様から返事がありませんでした。

 

「どうなんだい。おい、何か言えよ。あんなのたんすから出て来いよ!」

スクルッタおじいさんはきつい声で言って、杖でご先祖様のお腹をうんと強くつつきました

 

ガチャンと、音がしました。

その古鏡は細かに割れてドアから外れ、すごい勢いで下に落ちました。

細長いかけらが一つだけドアに残って、ご先祖様の困った顔を見せていました。

そのかけらも落ちると、スクルッタおじいさんはむっつり黙りこくっている茶色壁紙と顔を突き合わせることになりました。

 

商品ページ:ムーミンエコバッグ:ムーミン原画(ブラック) / Blue House / フィンランド 北欧

 

ヘムレンさんは木の小屋を天井も壁もなく、床だけの小屋にすることにしました。

スクルッタおじいさんは冬ごもりすると言いました。

ホムサは何も映らない青色の水晶玉を見ていました。

 

 

スクルッタおじいさんが冬ごもりをしてしまうと谷間は一層しんとなりました。

 

ヘムレンさん、ホムサスナフキンは楓の木の下にいました。

「ムーミンパパは初めのまんまの木の上にいるほうが好きかもしれないよ。」とホムサは言いました。

「君の言うことにも一理あるな」とヘムレンさんは認めました。

 

「12時過ぎると風が出てくるぞ」とスナフキンが言いました。

「ヘムレンさんと二人でちょっとヨットに乗れる」と続けて言いました。

 

二人は桟橋からヨットに乗って海に出ました。

ヘムレンさんが震え声で叫び、鼻が青白くなり、怯え切ってヨットのヘリを見つめていました。

 

「さあ、今度は気味が舵をとれよ」とスナフキンが言いました。

ヘムレンさんは夢中で舵をあっちこっちへ動かしました。

 

ふいにちゃんと舵が取れるようになりました。

ヨットは沖へ沖へと出ていきました。

 

家に帰ってきたヘムレンさんはホムサと家でコーヒーを飲んでいました。

「僕がヨットの舵をとったんだよ。」

「だけど、僕は今になってわかったよ。ぼくはもうヨットに乗らなくていいんだ。おかしいだろう。もう二度と乗る必要がなくなったってことがわかったんだ」とヘムレンさんは言って、心の底から楽しそうに大声を出して笑いました

 

 

「さあ、また体が温まってきた。靴下と長靴が乾いたら、僕は早速家へ帰るよ。家にはおいしいソースがたっぷりあるんだ。片づけなくてはならないことも山ほどあるし」とヘムレンさんは言いました。

 

ヘムレンさんは橋でスナフキンホムサに別れる時、ヘムレンさんは言いました。

「私のヨットはちょうどいい人にあげるよ。ヨットが入りようなだけの人が見つかるまで待っているよ」

 

ムーミン一家のヨットが見えた

スナフキンはテントの外に立っていました。

辺りがしんみりしてきました。

もう何時でも旅に出かけられる用意ができていました。

 

谷間はじきに雪に閉ざされてしまいます。

ゆっくりと静かにスナフキンはテントの杭を引き抜き、荷物をまとめました。

スナフキンはムーミンに手紙を書き、郵便箱に入れました。

 

夜明けのころ、スナフキンは自分の五つの音色を捕まえに海辺へ出かけていきました。

音色はすぐに近づいてきて、思っていたよりもさわやかで美しい音色でした。

 

※写真出典書籍:『ムーミン谷の十一月』講談社、トーベ・ヤンソン/作・絵、鈴木徹郎/訳、1984年発行

 

スナフキンは引き返してリュックを肩に引っ掛け、森へ入っていきました。

 

その夜、水晶玉の中にかすかな、でもいつまでも消えない光が灯っていました。

ムーミン一家のみんなが冬ごもりをするためにヨットの帆柱の先にカンテラを掲げて家に向かい始めたのです。

 

 

テントを張ってあったところが空っぽになったことにホムサはびっくりしませんでした。

ムーミン谷はすでに影絵のような世界になりました。

 

ホムサは山を登り、山頂に着いたら海が一面広がっていました。

 

※写真出典書籍:『ムーミン谷の十一月』講談社、トーベ・ヤンソン/作・絵、鈴木徹郎/訳、1984年発行

 

ムーミン一家は追い風に乗り、岸に向かって一直線に船を進めていました。

ムーミンたちは、ホムサが一度も行ったことのない、そして、岸からも見えないどこかの島へ行ってきた帰りなのです。

 

太陽は沈み切ろうとしていました。

ヨットはまだずっと遠くのほうにいました。

 

ホムサが森を抜けて岸に降り、岸伝いに桟橋に行って、ヨットのもやい綱を受け取るのに、ちょうど間に合うくらいの時間は、まだたっぷりありました。

 

終わり。

 

※参考書籍:『ムーミン谷の十一月』講談社、トーベ・ヤンソン/作・絵、鈴木徹郎/訳、1984年発行

 

ムーミン小説ダイジェスト版の制作もいよいよ最終作『ムーミン谷の十一月』を迎えることになりました。最終作の小説では初めてムーミン一家の誰も登場せず、ムーミンたちに関係す…...続きを読む


ムーミン谷の十一月ダイジェスト版、第二弾です。フィリフヨンカが屋根で四つ這いの状態で体を少しずつずらしながら窓のほうに近づこうとしているとき、急に風が吹きつけて窓が閉…...続きを読む


ムーミン谷の十一月のダイジェスト版も第三弾です。なんでも忘れてしまうスクルッタおじいさん、電気を食べるちびちび虫、ムーミン谷に訪ねてきたたまねぎまげのミムラ姉さん、冬…...続きを読む


いろいろなキャラクターが集まった、ムーミン谷の十一月の第4弾。ムーミン一家はいません。スナフキンはムーミンたちもよく話すし、たまにはうるさいと思いますが、ムーミンたち…...続きを読む


どんどん日が短くなり、寒さも増してきたダイジェスト版5弾目のムーミン谷の十一月。フィリフヨンカに変化が起きたり、お話を自分で作るホムサの想像力が膨らんだり、みんなでパ…...続きを読む


ムーミン谷の十一月、ダイジェスト版も残すところあ2つになりました。ムーミン谷に集まった6人のパーティーで行われる余興が始まります。ホムサは本を読みました。クルッタおじ…...続きを読む


ムーミン谷の十一月、ダイジェスト版もいよいよ最後になりました。ご先祖様としゃべりたくてスクルッタおじいさんなどみんなそれぞれ自分の思うような時を過ごしていました。スナ…...続きを読む

 

関連記事

どんどん日が短くなり、寒さも増してきたダイジェスト版5弾目のムーミン谷の十一月。フィリフヨンカに変化が起きたり、お話を自分で作るホムサの想像力が膨らんだり、みんなでパ…...続きを読む
冬の間に起きてしまったムーミンとリトルミィ。素晴らしいスキーを見たリトルミイは樽を壊し、板を足につけて自分も滑り始めました。そして初めてスキーにチャレンジするムーミン…...続きを読む
ムーミン谷の冬では、冬眠から目が覚めてしまったムーミンが赤と白のセーターを着たおしゃまさん(トゥーティッキ)と出会います。冷たい言葉に通じて愛を伝えるおしゃまさん(ト…...続きを読む
ダイジェスト版、5分で読むムーミン小説:たのしいムーミン一家の第3弾です。嵐が過ぎ去り、ようやく穏やかを取り戻し、眠りに付いたころ、大量のニョロニョロがあらわれたり、…...続きを読む
ムーミン谷の冬。ダイジェスト版も中盤に差し掛かりました。ムーミンは山に着いて出会った人物とは?ただ木の山は下から上まで燃え盛ってライオンのようなうなり声を上げました。…...続きを読む
ムーミン谷の十一月、ダイジェスト版も残すところあ2つになりました。ムーミン谷に集まった6人のパーティーで行われる余興が始まります。ホムサは本を読みました。クルッタおじ…...続きを読む

お薦めムーミングッズ

かわいいムーミンが色々な形で登場します!是非参考にご覧ください。


記事が見つかりません


記事が見つかりません


記事が見つかりません




記事が見つかりません



ショップコンセプト

1.フィンランド 北欧というと?

フィンランドもしくは北欧というと「幸福度が高い」「社会福利が充実」「なんかみんな楽しく生活している」というイメージを持つのでしょうか。ただし、実際に見て感じてみると、合致する部分もそうではない部分も見えてきます。良いと思う部分をうまく取り入れ、そうではない部分も積極的に理解することが大切だと思います。そのため、キートスショップは「フィンランドもしくは北欧と日本の交流を促進し、人々により幸せな生活をして頂く」ことの実現を目指していきたいです。

2.雑貨と現地ツアーに通じて幸せを増やしたい

「フィンランドと日本の交流を促進し、人々により幸せな生活をして頂く」という目的を果たすため、キートスショップ現在は「フィンランド雑貨販売」と「ヘルシンキ現地ツアー」の2軸で事業を展開しております。フィンランドの雑貨が好きな方により良い製品、より早く、より良い価格でご提供し、フィンランド雑貨をお客様が手に取る際の喜びを想像しながら事業を運営しております。また、実際にフィンランド・ヘルシンキまで旅をされた方々にはフィンランド文化の核心価値を実際にご体験頂けるヘルシンキ現地ツアーをサービスとしてご提供しております。

「キートスショップで買ってよかった!」「キートスショップのツアーに参加してよかった!」というお客様の声を糧に、より良い商品を提供できるよう、より良いツアーを提供できるよう進めていきたいと思います。

3.運営に「誠実」と「感謝」

「フィンランドや北欧と日本の交流を促進し、人々により幸せな生活をして頂く」目標に目指しながら、キートスショップは感謝の気持ちをベースに「誠実に対応する」ことを運営の第一事項にしております。いかなることに関しても最大限誠実な対応を致しますので、ご意見・ご質問は随時お問い合わせください。遅くても24時間以内にご返答致します。お問合せフォーム、メール:ken@kiitos.shop

4.キートスショップの名前

Kiitos」はフィンランド語で「ありがとう」を意味する言葉。『フィンランドには優れたデザインや製品を提供してくださることに、日本の方々には外国の文化を理解して頂くことに感謝し、ショップ経営に取り組んで行きたい』そのような思いから、ショップ名を「キートスショップ」にしました。

キートスショップは、「フィンランドや北欧と日本の交流を促進し、人々により幸せな生活をして頂く」ことが実現されるよう努めてまいります。

キートスショップスタッフ一同より(フールバージョンはこちら