フィンランドの森の奥にある世界遺産:ヴェルラ砕木・板紙工場(The Verla Mill)
国土の多くは森に覆われ、木材資源が豊富な国だからこその世界遺産。
今日はフィンランドの木材工業の代表例にもなりうる世界遺産をご紹介します。
2008年に世界文化遺産に登録されたヴェルラ砕木・板紙工場が他の博物館と最も異なるところは、全ての展示物は昔のまま、何も移動されていなく、持って行かれることなく、何も変わっていない状態です。
唯一いないのは作業員だけ。
ちなみに、フィンランドには合計7箇所の世界遺産があり、そのうち6つが文化世界遺産であり、一つだけが自然世界遺産です。
今回ご紹介するヴェルラ砕木・板紙工場はフィンランド南部内陸でヘルシンキから車で約2時間ほどかかる場所にある文化世界遺産です。
ヴェルラ砕木・板紙工場の過去に何があったのか?
ヴェルラ木材工場は1872年にフィンランド北部の町オウルから来たエンジンニア、ヒュゴ(Hugo Neuman)によって設立された工場です。
しかし、わずか2年で火災によって焼失してしまい、ヒュゴもこの地を離れました。
その後、1882年に製紙職人であるGottliebとLouisによって再設立されたうえ、板紙工場も同時に併設しました。
当時紙を作る原材料に綿が主流でしたが、ヴェルラ砕木・板紙工場では新しい技術を使用し、木材を原材料として紙を生産してました。
工場自体はレンガで建てられ、主に当時イギリスやドイツの工場スタイルを模倣しています。
1906年に株式会社となり、法人化したのち、1920年にKissakoskiという木材加工会社に買収されました。
フィンランド独立時に起こったフィンランド内戦では赤軍に占領されたが、幸い破壊されることなく、元の様子や設備が維持されました。
1922年に株式がKymi社に渡され、1920年代にダム、1954年に水力発電所が増設され、1960年代まで運営されてきたが、1964年の7月18日に最後の職員も定年を迎えたことで運営は終息されました。
ただし、水力発電所は引き続き地元へ電力供給を続けました。
ちなみに、第二次世界大戦中にヴェルラ砕木・板紙工場はフィンランド軍の銃弾を入れる紙箱を生産していました。
ヴェルラ砕木・板紙工場の生産と製品
ヴェルラは当時白色の紙ボードで名を知られていました。
フィンランド国内はもちろん、ロシア、東ヨーロッパ、更に南アメリカまでの箱や製本メーカーに輸出されていました。
現代化された製紙機械によって年間の平均生産量は2千トンに上ります。
ピーク時の1943年と1951年には年間生産量2900トンに達していました。
もちろん、現在の同じ体積を持つ新型機械だとわずか1年半だけでヴェルラの生涯81年間の生産量を作り出せますが、当時10人の手も必要とするヴェルラの機械はまだ「半分手作り」とも言えます。
当時板紙を必要とする製品が多く、例えば下記のようなもの:
- クッキー箱
- 本の表紙
- ケーキ皿
- 段ボール箱
- チーズ箱
- タバコ箱
- マカロン箱
- 包装用外箱
- 靴箱
※敷地にある水力発電所。
当時の製紙工程について
ヴェルラの製紙工場が特別なところは、すべての機械と装置は19世紀初期から使われて残されてきたもので、終了した1964年から全く変わっていないことです。
その当時の製紙工程は主に下記の四つです。
裁断と樹皮の除去
最初は手作業で木材を50センチサイズの塊に切り、そして樹皮除去機械に入れます。
研磨(すりつぶす)
研磨機を使って木材の塊をすりつぶして紙の原料であるパルプを作ります。
研磨機は1903年製で研磨に使用している石はスコットランドから輸入したもので、3トンに達したりします。
研磨機は高所に設置され、それで研磨されたパルプは水と重力で運ばれるようにしています。
水研磨
パルプに水が加えられ、更に研磨し、紙の原材料になります。
その後、薄く敷かれ、紙の原型になります。
乾燥
濡れている紙シートは乾燥室にて乾燥されます。
この作業は主に女性で行われていました。
毎日40立方メートルの木材が燃やされ、室内温度が摂氏75度に達したこともあります。
燃料のコストを抑えるため、夏の乾燥室も建てられ、冬の乾燥室で大変な作業を行われてきた従業員にとって、この夏用の乾燥室での作業は「休みの軽作業みたい」と言われていました。
※敷地内の川沿いの岩に5千年前の壁画があります。なかなか確認できないですが(汗)
ヴェルラ砕木・板紙工場営業概要
- The Verla Museum
- 開館時間:
5月2日から9月30日:火~日11:00~16:00(夏至節除き)
7月から8月末まで:毎日開館10:00~18:00 - 館内ツアー:毎時間ごとフィンランド語にて催行。英語などはリクエストによって催行。
- 入場料:
成人:10ユーロ
学生・年金受給者:8ユーロ
20名以上グループ:8ユーロ/名
18歳以下無料。 - 住所:Verlantie 295, 47850 Verla
- 交通手段:ヘルシンキより北東約160キロ。
レンタカーをお薦めします。
バスしか通っておらず、週に2日しか運行していません(Matkahuolto)。 - 地図
フィンランド国内長距離移動手段
電車:VR
- 価格:高め。主要都市まではSaver Ticketキャンペーンがあり、取れればかなり安い。
- 座席間隔が広めで非常に快適。Intercityの列車であれば無料Wifi付き。
- ヘルシンキは中央駅もしくはPasila駅から出発します。
- 予約サイト:vr.fi
バス:Onnibus
- 価格:早く予約すれば安くなるシステムを持つ格安バス。
- 主要都市間のみ運行。椅子間隔は狭い。無料Wifi付き。
- ヘルシンキはKamppiショッピングセンター地下一階の長距離バスターミナルから出発します。
- 予約サイト:Onnibus.com
バス:Matkahuolto
- 価格:高め。たまに格安チケットもあります。主要都市以外に小さい町にも運行します。
- ヘルシンキはKamppiショッピングセンター地下一階の長距離バスターミナルから出発します。
- 予約サイト:Matkahuolto.fi
飛行機:Norwegian
- 価格:安め。ヘルシンキーロヴァニエミは片道25ユーロから、ヘルシンキーイヴァロ(イナリ)は片道40ユーロから。
- ノルウェー系の格安航空です。ノルウェー外でもヨーロッパ内でよく利用される航空会社の一つです。
- 予約サイト:Norwegian.com
飛行機:Finnair
- 価格:高め。たまに安いチケットもあります。フィンランド国内の運航都市が多いです。
- 予約サイト:Finnair.com
ヘルシンキから日帰りでもいける場所はたくさんありますので、是非参考にしてください。
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