社会福祉大国のフィンランドでは子育てが比較的にしやすい国です。
妊娠時から子供が小学校入学まで産婦人科と小児科が同時に検査、診察、カウンセリングを提供する無料クリニックサービス「ネウボラ」があり、親になる若手夫婦には心強いサービスです。
参考記事:フィンランドの子育て支援「ネウボラ」:妊娠発覚後から子供6歳まで検査・指導完全無料
出産時にすべての家庭には赤ちゃんに必要なもの一式が入っている「ベビーボックス」が無料で届き、忙しい親にはとても便利なサービスです。
参考記事:フィンランドのベイビーボックスとは? 5分でわかるフィンランド
産休、育休に入ると収入の約7割が補助金として支給され、経済面の問題が少なくなります。
更に、待機児童の問題がないため、保育園に預けたいなら生後3ヶ月から預けることができます。
参考記事:フィンランドの手厚い子育て支援、その補助金はいくら? 5分でわかるフィンランド
しかし、様々な補助金や支援サービスがあっても、家族に一人が増えるので、出費が増えるのも事実です。
実際、フィンランドでは、様々な影響を受け、出生率が2010年以降に毎年下がってきています。
参考記事:少子化の衝撃を急速的に受けるフィンランドが直面するチャレンジ 5分でわかるフィンランド
その理由は、不安定な経済状況、より自分の人生を長く楽しみたい、親になる責任を背負いたくないなどなどあります。
その中で、お金が一つ重要な要素です。
今回はフィンランド国営放送のニュースをもとに二つの家庭が実際に赤ちゃんを0歳から1歳9ヶ月まで育てるとどのくらいお金がかかるかを見てみましょう!
Peltomaa家族では110万円かかった
Peltomaa夫婦は初めて親になりました。
娘が生まれた際に様々な赤ちゃん用品をプレゼントとしてもらい、他の用品は自分で購入しました。
出費は下記の通りです。
- 服:1300ユーロ(約17万円)
- 赤ちゃん生活用品:1340ユーロ(約17万円)
- 食品:1150ユーロ(約15万円)
- おむつ:810ユーロ(約11万円)
- 保育園、水泳クラス、保険、洗礼、光熱費の増加など:3900ユーロ(約51万円)
※ユーロ=130円
これで赤ちゃんを育てる21ヶ月間の出費は約110万円でした。
Pynnönen-Nyqvist家族では62万円
Pynnönen-Nyqvist家族では赤ちゃんのおもちゃをほとんどもらっていました。
赤ちゃんの服はほとんど中古で購入したため、出費をかなり抑えていました。
- 服:500ユーロ(約7万円)
- 赤ちゃん生活用品:1460ユーロ(約19万円)
- 食品:515ユーロ(約7万円)
- おむつ:765ユーロ(約10万円)
- 保育園、保険、洗礼、光熱費の増加など:1640ユーロ(約21万円)
※ユーロ=130円
経済の負担は少子化を加速させる重要な一因
単純にこの二つの家庭を例として見ればわかりやすいですが、様々な社会福祉制度があっても、赤ちゃんを育てるには多くのお金がかかります。
赤ちゃん一人の1年9ヶ月分の生活費で少なくとも60万円用意しないといけません。
平均して毎月約3万円の支出増加になりますね。
金額自体はそれほど大きいわけではないですが、税金の高いフィンランドでは小さい数字でもないです。
ちなみに、フィンランドでの平均月収は下記の通りです。
- 男性18~29歳:1988ユーロ(約26万円)
- 男性20~39歳:3350ユーロ(約44万円)
- 女性18~29歳:1560ユーロ(約20万円)
- 女性30~39歳:2428ユーロ(約32万円)
※この数字から様々な保険や税金が天引きされます。
また、子供が生まれることで家のスペースも増やさないといけません。
子供1人が生まれることで、家の生活スペースを確保しないといけません、首都ヘルシンキエリアではそのスペース増加分の賃料は毎月約94ユーロ(約1万2千円)です。
水道代も毎月約10ユーロ(約1300円)増えます。
出産・子育てがキャリアに対する影響はフィンランドでも大きい!
子育て先進国のフィンランドでも出産・子育てがキャリアに全く影響がないとは言えません。
やはり仕事で数ヶ月間から1~2年間もギャップがあれば、キャリアに影響は出るものです。
デンマークでの研究報告によると、女性は子供の出産により、出産後や仕事復帰後でも収入が約20%も低下するのです。
この現象は「子供による罰(child penalty)」と呼ばれています。
フィンランドでは同じ研究が行われていないですが、フィンランドでは女性は出産によってキャリアへの影響がデンマークよりも大きいなのではないかと思われています。
なぜなら、フィンランド人女性の産休・育休は平均してデンマーク女性よりも長いからです。
そのため、多くの若手夫婦は子供を急いで生むより、短期雇用契約が長期雇用契約もしくは終身雇用契約に切り替えることを優先しています。
長期雇用契約や終身雇用契約が手に入ってから安心して子供が産めて育てられるからです。
これらの数字と現象を見ると、フィンランドで経済状況がどれだけ少子化に深く関係するかがわかりますね。
少子化だけではなく、国の財政、永続運営にもかかわるので、経済促進策がやはり重要ですね。
引用:YLE How much does it cost to have a baby in Finland? Yle does the maths
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