フィンランドベーシックインカム最終報告発表!雇用促進効果わずかでも精神安定効果あり

公開日:2020年5月12日  関連分類:

 

いよいよ先日の5月6日にフィンランドで2017年から2018年で実施された「ベーシックインカム」の実験結果最終報告が発表されました。

 

 

簡単におさらいしますが、ベーシックインカムという制度は国民に対し、無条件に毎月一定の金額のお金を支給することという制度です。

 

フィンランドでは2017年から2018年の2年間に渡り、ランダムで選ばれた2000人に毎月560ユーロのお金を渡すように実験をしてきました。

これは日本円に換算して約73000円ぐらいの金額です。

 

 

【ベーシックインカム制度の目的】

そしてベーシックインカムの最も重要な目的は就業率の向上です。

つまり、失業している人の数を減らす効果のある制度と期待されていました。

 

例えば、現在の制度の問題点として、制度失業補助金をもらっている人は仕事を見つけ、仕事に就くと失業補償金がもらえなくなります。

そのため、給料の低い仕事に就いてしまうと、もらえるお金は失業補助金よりも低くなり、賃金の安い仕事はチャンスがあってもやめてしまう可能性が高いです。

 

ベーシックインカムであれば、無職者が安い給料の仕事に就いても必ず毎月ベーシックインカムをもらえるので、低い賃金でも仕事しようとする人が増えるんじゃないかというのがベーシックインカム制度の目論みの一つです。

 

 

 

 

さらに毎月生活費がギリギリ足りないもしくは全然足りな人は、生活していくためにいくら賃金の低い仕事でもせざるを得ません。

となると毎日は低い給料とギリギリの生活維持に追われ、学ぶやスキルアップする時間がなく、毎日が悪性循環になります。

 

ただし、ベーシックインカムがあれば、最低の賃金条件に妥協せず、自分のスキルアップを図り、もっと給料の高い仕事を目指して狙っていく可能性が増えてくるというのもベーシックインカム制度のもう一つの目的です。

 

更に、フィンランドの社会福祉制度には様々な補助制度があり、それぞれ個別で申請しなければいけません。

なので、申請項目が多い場合、手続き自体が煩雑になり、時間もかなりかかります。

社会福祉制度をベーシックインカム制度に一本化にすることで手間をほとんど省くことができます。

それで、人々はもっと自分のプライベートの時間もしくは仕事に関する時間や勉強する時間に使うことができるようになるのではないかという狙いもあります。

 

 

【参考記事】

 

 

そして今回はベーシックインカムの最終報告が発表されました。

 

 

ベーシックインカムによる雇用促進の効果はわずか

結論から言うとベーシックインカムによる雇用促進の効果はわずかでした。

 

2017年の11月から2018年の10月までの1年間においてベーシックインカム組の「就業日数」は実験組に対し、6日間長かったです。

つまり割合でいうと365日のうち、6日間長かったということですね 。

 

しかし、ベーシックインカム組を細分化してみると、結果が変わる可能性があります。

例えば、子供のある家庭において、ベーシックインカム組の就業率は明らかに上昇したのです。

ただし、今回の実験では全体でも2000人しかおらず、細分化すると人数が少なくなり、統計的な意味がなくなるので、結論付けるのが難しいです。

 

 

 

 

ベーシックインカム実験において、フィンランド政府が見出したい雇用促進効果に関し、今回は明らかな効果があるという結論には至りませんでした。

 

 

安心感の向上及び不安の低減に効果あり

今回のベーシックインカム実験では、ベーシックインカム組対象者の心理状態など様々な要素においても調べられました。

 

 

うつ状態の自己評価

うつ状態に関し、対象者に自分がうつを感じているかどうかを0から10点で自己評価してもらい、その結果コントロール組が平均6.8に対し、ベーシックインカム組の平均点数は7.3で高かったです。

 

特に自分のうつ状態を0点、3点、4点と評価した人の中で、ベーシックインカム組はコントロール組の半分以下でした。

さらに自分の状態をとても良い9点と評価した人の中で、ベーシックインカム組はコントロール組の約2倍ぐらい高かったです

 

 

健康状態の自己評価

健康状態の自己評価も行われました。

健康状態に関し、5段階評価で行われ、「非常に良い」「良い」「どちらでもない」「悪い」「非常に悪い」「わからない」の6項目で選んでもらいました。

 

ベーシックインカム組の中で、自分の健康状態を「非常に良い」と「良い」に評価したのが58%でした。

コントロール組の中で、非常に良いと良いに評価したのが51%に止まりました。

 

ベーシックインカム組はより自分が健康的と感じたということです。

 

 

 

 

生活をより楽しむようになる

ベーシックインカム組の中で、生活を楽しめなかったと答えた人が24%に対し、コントロール組は36%でした。

生活を楽しむ面においても、ベーシックインターン組の方が明らかに高かったです。

 

 

記憶力向上

記憶力の自己評価において、ベーシックインカム組の70%は自分の記憶力が良いと評価しているが、コントロール組は自分の記憶力が良いと評価したのが62%だけでした。

 

 

新しいことを学ぶ意欲

新しいことを学ぶ意欲の自己評価に関しても、ベーシックインカム組は良いと評価したのが73%に対し、コントロール組は63%にとどまりました。

 

 

集中力の向上

集中力において、ベーシックインカムが良いと自己評価したのが68%に対し、コントロール組は58%のみでした。

 

 

孤独感覚の低減

孤独感覚の自己評価も調べられました。

ベーシックインカム組が自分が孤独をあんまり感じないと答えたのが59%に対し、コントロール組は51%でした。

孤独感覚に関しても、ベーシックインカム組の人はあまり自分はひとりぼっちと感じませんでした。

 

 

 

 

面談調査では答えが様々で傾向がはっきりしなかった

今回の実験では81名の対象者に面談調査も実施されました。

 

しかし、一致した傾向が見られませんでした。

一部の対象者はベーシックインカムが自分の雇用状態に大きく影響したと答えたが、他の対象者はそうでもないと答えました。

 

仕事に着く時間と日数に関し、ベーシックインカムをもらっていた人は、給料をもらう仕事はもちろん、給料はもらわない仕事に使える時間が増えたと感じたそうです。

例えば、家族に使う時間や社会活動に使う時間などです。

 

 

しかし、今回ベーシックインカム実験の主要目的である長期財務計画の能力改善、独立生活の能力改善、就業率の改善においては明らかな効果が見れませんでした。

 

 

 

 

まとめ:フィンランドのベーシックインカム実験について

今回フィンランドで実施されたベーシックインカム実験に関し、実に多くの研究者から人数も期間も足りないという話がありました。

 

今回のベーシックインカム実験では2000人を対象に2年間実施されたが、2000人だけではベーシックインカムによる様々な効果を見出すのが難しいという研究者もいますし、ベーシックインカムの効果は2年間だけでは産まれず、実際に効果が見えてくるのが5年もしくは10年間の期間が必要だと主張する研究者もいます。

もちろん、より大規模でより長い期間のベーシックインカム実験をした方が正確的な結果が得られるでしょうが、国の財政もなかなか厳しいのでそう簡単にはいかないでしょう。

 

 

単純にフィンランドに住む一人の住民から見てみれば、ベーシックインカムのから得られる安心感は確か絶大に感じます。

 

フィンランドは社会福祉大国であり、様々な社会福祉制度や補助金制度が充実されています。

しかし、それぞれの制度の中身を理解し、補助金をもらう条件を把握した上で申請書を書いて提出しなければいけません。

そして、書類に不備もしくは条件に問題があれば国から問い合わせが来てそれに対して答えなければいけません。

このような煩雑な手間があるので、一般国民に対しても国の職員に対しても負担になるのです。

 

こういった負担を減らし、確実に収入を確保できる制度があれば国民もより安心して生活していけるのではないかと筆者は感じます。

 

 

参考文献:Results of Finland’s basic income experiment: small employment effects, better perceived economic security and mental wellbeing

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