5分で読むムーミン小説:ムーミン谷の夏祭り(6)

公開日:2018年2月9日  更新日:2019年11月30日  関連分類:

長い間、スナフキンはものも言わないでボートを漕ぎ続けました。

ムーミンは、あの古い帽子の懐かしい形が、夜空の中にくっきり浮かんでいるのと、パイプの煙が静かな大気のうちにぷかぷかと立ち昇るのを見ていました。

 

ムーミン谷へ!!

ボートが木の下の間へ滑り込んだ時、スナフキンはムーミンに言いました。

 

「さあ、僕がこれからいうことをよく聞くんだよ。」

「きみは、他の人たちのところへ戻って、ムーミン谷に帰りたい人をみんな連れておいでよ。家具は持って来させないでくれ。ヘムルたちが劇場の見張りをしていないうちに急いでくれ。」

ムーミンは「うん」と答えて陸地から歩いていきました。

 

※絵は原作書籍より撮影して引用:『ムーミン谷の夏まつり』講談社、トーベ・ヤンソン/作・絵、下村隆一/訳、1990年発行

 

みんなが我が家へ向かって急ぎました。船を漕いだり、帆で走らせたりして、昼も夜も急ぎました。

ムーミンママは自分のいる場所がわかりました。お寂し山へ行く道に沿って進んでいるのでした。

 

「みんな、帰ってきたんだ。うちへ、うちへ、うちへ!」

とリトルミイはミムラ姉さんの膝の上で歌いました。

 

スナフキンは探るような眼差しを周りに投げてヘムルたちを警戒し続けていました。

「ねえ、きみ、もうとっくにヘムルたちを引き離したぞ」とムーミンパパが言いました。

 

ボートの真ん中に水泳用のガウンをかぶって小さなヘムルは「するべからず」を何回も何回も書き続けました。

 

ムーミンママとムーミンの話から分かりましたが、スナフキンが公園から救い出した24人の子供は劇場に残り、未来には役者になるかもしれませんし、そうではないものはフィリフヨンカの養子になるそうです。

スナフキンも今後毎年見に行くそうで、みんなの誕生日に手紙を書くそうです。

 

 

そして、ミーサは悲劇の役をやるのが幸せで、劇場に残り、役者を続けるそうです。ホムサは舞台監督になったそうです。

 

水が浅くなってきたことでみんなは水の中を歩くことにしました。

スナフキンは一番後ろを歩いていつもよりもっと無口で絶えず当たりを見回しました。

「あの人たちがここまで追っかけてきたら、私、その古帽子を食べて見せるわ!」とミムラ姉さんが言いました。

 

道が狭くなり、山の間に口が開き、そこにムーミン谷の懐かしい緑が待っていました。

もう川の曲がり角も、青く塗ってある橋も見えました。

みんなは、あたりにジャブジャブ水を跳ね返しながら急ぎました。そして、家へ帰ったらしようと思うことを、あれこれと元気よくしゃべりあいました。

 

※絵は原作書籍より撮影して引用:『ムーミン谷の夏まつり』講談社、トーベ・ヤンソン/作・絵、下村隆一/訳、1990年発行

 

とその時、けたたましい警笛が静かな空気を劈いたかと思うと、前にも後ろにもいたるところにヘムルが群がって現れました。

もうほとんど家へたどり着いたと同じなのに、そこで警官に捕まってしまうなんて、あまりにも恐ろしいことでした。

 

「さあ、どうだ」

とヘムルが言いました。

誰も何も言いません。

 

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すると、あの小さなヘムルが一生懸命いとこの前に進み、ノートを差し出して言い出しました。

「スナフキンは後悔してお許しを願っています」

「そんなこと、僕は……」とスナフキンが言いかけたが、大きいなヘムルがぎょろりと睨んできたので黙りました。

 

大きいなヘムルはノートを確認し、5000回も書かれた「するべからず」を確認出来ました。

 

「しかし……」とスナフキンが言いだしました。

「どうか、何も言わないで」小さなヘムルが頼みました。「私、本当に楽しかったの。本当に、本当に!」

 

「だが、立て札を!」と大きいなヘムルが言いました。

「この人、代わりに、私のところの野菜畑にいくつか立て札を立てることはできません?例えば、『はい虫たちは、レタスを少し残しておくこと』といような」と今度はムーミンママが聞きました。

それでようやく大きいなヘムルは許してくれ、釈放としてくれました。

 

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ようやく、みんな家に着きました。

散乱して家具もだいぶなくなったが、だれでもがっかりしていません。

ようやく帰ってきたものですから。

 

ムーミンはスナフキンのキャンプ地にお休みを言いに行きました。

スナフキンは、河原に腰を下ろし、パイプをくゆらせていました。

 

家に戻ったら、玄関の前に座っているムーミンママが言いました。

「これ、なんだか当ててごらん!」

「小さなボートだ!」

とムーミンはそう言って笑いました。

別におかしいことがあったからではありません。とてもとても幸せに感じたから、ただ笑ったのでした。

 

※参考書籍:『ムーミン谷の夏まつり』講談社、トーベ・ヤンソン/作・絵、下村隆一/訳、1990年発行

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