フィンランドの本場サウナでは、クールダウンとして湖や海で泳ぐなんてことはよくある光景です。
それは夏冬、季節問わず。
しかし、フィンランドでは「湖や海に注意しましょう」と言われる時期があることをご存知ですか?
日差しの良いフィンランドの夏後半から徐々に増えてくる藍藻と言われるシアノバクテリア。
これがちょっと厄介なものなのです。
藍藻(らん藻)シアノバクテリア
熱帯魚などを飼育している人にとってはお馴染みの「藍藻」。
「藻」が付くからただの藻類の仲間でしょ?と一見思われますが、これは緑色をした水中に漂う細菌の一群でもありシアノバクテリアと言われることもあります。
人によっては「アオコ」と言った方がピンとくるかもしれません。
一般的には淡水で発生するのもなのですが、フィンランドのバルト海の塩分濃度はとても低いため、この藍藻が海でも発生します。
参考:バルト海の塩分濃度・フィンランド人はマットを海で洗う?!
この藍藻の何が良くないのかというと、実は人間の肝臓または神経の毒素を生成することができるもので、皮膚刺激物を生成する可能性もある有害なもの。
「可能性」という言葉を使うわけは、必ずしも湖や海などで100%この藍藻(シアノバクテリア)だけの影響で害が出ている、、、という判断が不可能だからです。
しかしながら、人の健康に害を及ぼす可能性があるという前提で処理されるべきもの。
決して人体に無害ではないのです。
藍藻は人にどのような害を及ぼすのか?シアノバクテリアによる症状
藍藻(シアノバクテリア)によって引き起こされる症状は様々。
通常は数時間以内に症状が現れます。
例えば、
- 皮膚症状の異変
- 吐き気、胃の痛み、下痢、嘔吐などといった腹部の症状
- 鼻水、頭痛、目の炎症、発熱など風邪のような症状
これらを引き起こす可能性があります。
症状がある場合や、藍藻がみられる場所で泳いだりした場合はきれいな水で十分に洗い流すことが必要です。
フィンランドの湖や海に藍藻が発生しやすい時期
フィンランドではこの藍藻のことを「シニレヴァ(Sinilevä)」と言い、毎年夏の終わり頃から発生し出すことが多く、だいたいは7月後半〜8月が特に注意です。
フィンランド南部は特によく発生しますが、ラップランドやその他の地域でもみられます。
温暖で穏やかな天候は藍藻にとっても成長・発生しやすい環境であり、フィンランド湾と群島海は、フィンランドの海域の中で最も栄養価が高く、暑い夏には多くの藍藻が生息することがあります。
困ったもので多くの人がちょうど水浴びしたくなる時期に発生する藍藻。
しかも、フィンランドでは入浴水を監視する自治体の健康保護当局は、シアノバクテリアの発生確認をするために毎日浜辺を訪れたり、毎日のようにシアノバクテリアの状況を報告したりしていません。
ですのでもし、ここで泳ごう、クールダウンしよう、とする前には常に水の状態を目で見てチェックしておきましょうとフィンランドでは言われています。
ではこの藍藻、発生しているのかどうか?どうやって判断すればよいのか??という話になってきます。
藍藻はまず目視と匂い、そしてグラスや棒でのチェック方法
残念ながら、この藍藻(シアノバクテリア)の正確な発生期間を推定することは不可能です。
ですので自分自身でチェックするか、または藻類モニタリングの情報サイトなどでチェックすることになります。
藍藻は緑色をしていることが多く、ひどい場合には独特の臭いを発生します。
それでも、よく似た害のない緑色っぽいものや藻類は他にも多くあるので、この見分け方が難しいという人もいます。
その場合は、グラスと棒を用意してチェックすることもできます。
透明のグラスなどで湖の水をすくい、約1時間放置して水面に浮かび上がるものがあるかどうかを見ます。
画像引用:https://thl.fi
緑色の粒子が表面に浮かび上がった場合、それは藍藻です。
更に、棒でのチェックは水面を棒ですくってみましょう。
藻の塊が棒にぶら下がったままの場合は無害な糸状藻ですが、藍藻の場合は水中で粒子に分解します。
もっと詳しく正確に知りたい場合は、Järvi&Meri Wikiのサイトでチェックできるでの知っておいても良いでしょう。
このサイトではフィンランド環境研究所、ELYセンター、および地方自治体によるフィンランドの内陸水域および海域における全国的なシアノバクテリアの状況を知ることができます。
最長で1週間前の藍藻観測状況が表示されています。
(青:藻がない、緑:ややある、黄色:大量にある、赤:かなりある)
藍藻、どのようなことに注意すべきなのか?
もし、藍藻が発生しているということが分かればどういったことに注意すべきなのか知っておくと良いでしょう。
その水域で泳がない方が良い
藍藻がかなり少ないのであれば、軽く水浴びなど体内に入らないようにすれば大丈夫です。しかし、後はきちんときれいな水で洗い流しましょう。
基本は泳いだりしないこと。安全に越したことはありません。
子供やペットは遊んだり泳いだりはNG
幼い子供やペットは、いつ体内にこのシアノバクテリアが侵入するかわかりません。大人でも不注意で口や鼻から侵入する恐れもあるくらいなので特に子供やペットは危険が高すぎます。
人間や動物の飲料水として使用はできない
水を沸騰させたらOKでしょ?という方がいますが、実はそれでも全く効果はありません。
サウナのロウリュには使えない
驚くことに、最も有害なのはシアノバクテリアがある水を蒸気として使用することです。毒性物質が効果的に蒸発してしまい、鼻から肺へ吸入という行為は容易に体内へ害を取り入れてしまう危険な方法です。
食用植物の水やりにもおすすめできない
絶対にダメとも言い切れませんが、口にする植物に与える水としてはおすすめできません。やっぱりきれいな水で育ったものを口にしたいと思うことは自然なことでしょう?
食器を洗う水としておすすめできない
湖や塩分濃度の低いフィンランドの海で食器を洗う、この行為はフィンランドのコテージなどでは珍しくないことです。
他にもキャンプなど野外活動の最中ではササっと濯いでしまいたくなるようなコップであっても藍藻がある場所では食器をきれいにするどころか、毒素をわざわざ食器に付着させているようなもの。
ちなみに、ハイカーが使用する浄水器でも除去されないので注意です。
藍藻(シアノバクテリア)の発生をどのように防ぐことができるのか?
自然界では幸いなことに、土壌や水中の他のバクテリアがやがて藍藻(シアノバクテリア)の最悪な毒素でさえ分解します。
しかし、これらの毒素は藍藻が消えたように見えた後でも数日間、水中に残ります。
ただ、この藍藻は成長するためには栄養素を必要とするので、より長期的に制御する効果的な方法が1つあります。
それは、水域からリンを取り除くこと。
リンやその他の栄養素は成長する魚に蓄積します。
ですので釣りはフィンランドの湖やバルト海からリンを取り除く方法でもあるのです。
そのため、国内の魚を食したり、リリースをしない釣りによって誰もが協力できることです。
しかし、魚はこの藍藻(シアノバクテリア)を食べている可能性はゼロではないため、内臓はできる限り食べないようにしましょう。
ちょっと危なっかしい注意点を今回はご紹介しましたが、あまり敏感になりすぎても楽しむことができません。
「こういうことも実はあるんだよ」というくらいで旅行の際には頭の隅にも置いておいてくださいね。
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