ビタミンDの不足はうつ症状を引き起こすのか?冬が暗いフィンランド特有の問題

公開日:2018年10月25日  更新日: 2022年10月26日 関連分類:

 

先日筆者はヘルシンキ近郊の友人宅にて食事をしていた時にやはり季節は季節で冬と寒さと日照時間が話題に上がっていました。

 

その時話していた内容の一つは「フィンランド人はよくビタミンD(錠剤)を飲んで気持ちの落ち込みを予防する」ということでした。

その理由はフィンランドの冬が日照時間が短くて日光の強さが弱いので、通常日光を浴びることで皮膚で生成されるビタミンDが足りなくなるからです。

 

しかし、友人の一人は「ビタミンDは日常の飲食物から摂取できるので、わざわざサプリメントのビタミンDを飲む必要がなく、あくまでも心理的に自分を安心させたいためだ」と言っていました。

 

 

筆者はそれを聞いて少し考えていました。

確かフィンランド人の間では「冬はビタミンDを飲む」「ビタミンDを飲むとうつ症状を予防できる」という「うわさ」をよく聞いていますし、スーパーや薬局にはとても巨大なビタミンD陳列棚がいつもとても目立つので、本当かなと思ってきました。

 

しかし、本当にそうなのか?何か医学文献はないのか?とも思いました。

それで、少し調べてみました。

 

それで、最新の文献によってビタミンDとうつ状態の関係を見つけたのです!

 

※本記事では医学文献の紹介にあたり、わかりにくい言葉の使用を避けており、若干正確性を失うことがあります。また、筆者は医者でも学者でも専門家でもないので、あくまでも一つの参考情報としてご覧頂ければ幸いです。

 

 

ビタミンDとうつ状態の関係を示す文献を見つけた!

今回ご紹介するのは2013年に発表された『イギリス精神医学ジャーナル(The British Journal of Psychiatry)』で発表された文献『成人におけるビタミンDの不足と憂うつ:システムレビューとメタ分析(Vitamin D deficiency and depression in adults:
systematic review and meta-analysis)』です。

 

今までは様々な研究文献からビタミンDの不足と憂うつ状態の関係が示されてきましたが、直接両者の関係を研究内容とする文献がありませんでした。

それで、この文献の作者は過去の多くの文献から「ビタミンDの量」と「憂うつ状態」を測定していた文献14個を選び、分析を行いました。

 

14個の文献はアメリカ、オランダ、中国、イギリス、日本、イタリアといくつか他のヨーロッパ国の研究チームから発表されており、合計延べ3万1千名の成人患者データが分析対象となっています。

 

 

ビタミンDの不足はうつ状態と関係あるのか?

ざっくり結論を申し上げると、「ビタミンDの不足はうつ状態を引き起こす可能性が高い」です。

 

この文献のデータ分析から、9個の過去文献の総合分析によってビタミンDの低いグループとビタミンDの高いグループと比較すると、うつになる可能性が約30%高いそうです。(オッズ比1.31)

 

また、一つのタイミングにうつ状態ではない患者さんのビタミンD量を測定し、その後ある程度時間が経ってからビタミンDの量を再測定しながらうつ状態も測定し、ビタミンD量の変化を見ながらうつになる可能性との関係性を見る分析も行われました。

このような分析は3個の過去文献からデータを抽出して分析した結果、ビタミンDの低いグループの人は明らかにうつ状態になる可能性が高いことがわかりました。(ハザード比2.21)

 

本文献の作者は他に様々な角度からも分析を試みていましたが、多くの分析結果はビタミンDの不足がうつ状態と関係する結果を示しましたが、統計的な有意差が出ていませんでした。(相関傾向はあるが、本当かどうかは言えない)

 

 

ビタミンDが不足?欠乏?どう線引きするか

あくまでも研究者の問題になるのですが、ビタミンDが足りないという線引きもなかなか難しいです。

 

アメリカ学術家庭医学(American Academy of Family Physicians)のサイト情報によると、ビタミンDの不足は血液検査でビタミンDが50~75 nmol per Lで、ビタミンD欠乏は50 nmol per L以下というふうに定義されています。

 

本文献でビタミンDの不足とうつ状態の関係を見る際に、「ビタミンDの不足」という線引きをどこにするかが難しいです。

 

あくまでも過去の文献データをベースにするので、過去の文献の中ではビタミンD量の線引きが20  nmol per Lもあれば、37.5、50、75  nmol per Lなどもあります。

もちろん、ビタミンD量の線引きを低めの20  nmol per Lにすればうつ状態との関係性がよりはっきりしますが、その線引きが本当に良いのかというと、誰も言えないでしょう。

 

 

ビタミンDの不足はある程度うつ状態に関係する

もちろん、今後ビタミンDの不足とうつ状態との関係性を直接示す研究が必要ですが、現段階では、「ビタミンDの不足はある程度うつ状態に関係する」と理解頂ければと思います。

 

北欧フィンランドの在住者としてはビタミンDの含まれる量が最も低くてもいいので(そのほうが安いでしょうし)サプリメントは飲んでおいたほうがいいでしょうね。

 

これから迎える暗闇の冬に早めに備えておきたいです。(本格的な冬になる前の、10月ごろからDの摂取を始めると良いそうです!)

 

 

参考文献:The British Journal of Psychiatry (2013) 202, 100–107. doi: 10.1192/bjp.bp.111.106666

 

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