働き方改革が盛んで進んでいる日本。
柔軟な働き方を導入する企業はどんどん増えていますが、実際に利用する人がどのくらいいるかの話になると、それほど浸透していないイメージが強いと感じます。
フィンランドでは対照的に、柔軟な働き方はすでに定着していると言えます。
それは勤務時間であったり、勤務場所であったりなど、広い範囲で自由が利く働き方です。
なぜフィンランドでは柔軟な働き方が実現され、浸透しているでしょうか。
その背景には3つの理由があります。
コロナウィルスの流行で一気に広まった在宅勤務(テレワーク)
実にコロナウィルスの流行前にすでにフィンランドでは多くの人々が在宅勤務・テレワークを日常的に行っています。
コロナウィルスが流行する前の2019年にフィンランドではすでに14.1%の従業員が在宅勤務を行っていました。
同時期にイギリスではわずか4.7%で、アメリカではさらに低い3.6%の従業員しかできていません。
日本の調査では2017年にテレワークをする人は14.8%で実に低くないです。
しかし、コロナウィルス流行後はどうなっているでしょうか。
日本は緊急事態宣言後も、第二波第三はが来ても、テレワークの実施率は最高27.9%にとどまっています。
その同時に、フィンランドではテレワーク実施率が60%を超えています。
この差は驚異的としか言いようがありません。
なぜ、フィンランドではこんなにもテレワークが瞬く間に普及したでしょうか。
なぜフィンランドでこんなに働き方が柔軟的でしょうか。
いくつかの切口を見て行きましょう
フィンランドにあった、一つ柔軟的な働き方の実例
フィンランド人のMさんは暗くて寒くて長いフィンランドの冬に飽きてきました。
その時にちょうど妻は産休中なので、妻の産休期間とフィンランドの冬期間に合わせ、半年間スペインに住みながらフィンランドの会社で働けないかと考えたのです。
20人の部下をまとめるシニアマネジャーとして、彼は職務内容を箇条書きに書き出し、それぞれの部分に対し、テレワークする場合の対応方法をまとめた上、上司に提案しました。
彼の上司と人事担当は彼のテレワーク提案に積極的な姿勢で応じてくれました。
彼はこの200人の社員を有するフィンランドIT企業で初めて半年も海外からのテレワークを行う初めての実例となりました。
彼は自分の経験を語りました。
「スペイン南部のマラガという小さい町でハイキングして泳いでいました。通勤がない分、家族との時間が増えました。環境が変わり、気候にも恵まれ、業務効率が向上しただけではなく、いつもと違う視点からの発想も増えました。」
彼の会社の人事もメッセージを出しています。
「フィンランドがヨーロッパでテクノロジーの中心になることはありません。なので、いかに優秀な人材に来てもらえる誘因を作らないといけません。混雑で窮屈を感じる大都会に住みながら働くより、森の中に住みながら湖の横で働くことは優秀な人材にとって一つ大きいなメリットではないでしょうか。」
法律改定がフィンランドの柔軟な働き方の基盤を作った
2011年に行われた働く時間の自由度調査では、「フレキシブルタイム制度」の企業導入率はフィンランドで92%に達しています。
との同時にアメリカは76%、ロシアは50%で、日本は18%でした。
フィンランドの高い導入率を作り出した基盤は「法律改定」でした。
1996年に可決された「労働時間法」(Working Hours Act)では、ほとんどの職種の労働者に対し、勤務時間を最大3時間まで早めに始めるもしくは遅く始める(同時に早めに終わりもしくは遅く終わる)ことが労働者の権利として定められるようになりました。
この法律を実施してから15年後に、フィンランドは世界で最も勤務時間がフレキシブルな国に躍進したわけです。
これだけではないです。
2020年から実施される更なる法改正で、労働者の「職務柔軟性権利」がさらに拡大されました。
「ほとんどの職種の労働者は勤務時間の最低半分以上を好きな時間と好きな場所でやることができる」
週に働く時間数に変わりはありません。
週に40時間働く人は変わらず40時間働きます。
しかし、その半分にあたる20時間以上の時間を好きな時間と場所にすることができるようになります。
家で働いてもいいし、カフェでもいいし、サマーコテージでやってもいいのです。
そして、朝6時から働いてもいいし、夜10時から働いてもいいです。
場所にも時間にも制限されません。
もちろん、これらを実現するには高速ネット環境とクラウド情報共有できる環境の整備が必要です。
実際に様々な研究では、柔軟な働き時間と場所は働く効率の向上に貢献しています。
中国のあるコールセンターにいる1万6千人の従業員を対象に行った調査では柔軟な働き方は業務効率を13%も向上させたのです。
「信頼」はフィンランドでテレワークが普及した一因
Eurobarometerの調査では、フィンランドはヨーロッパの中で自国の国民を最も信頼している国です。(フィンランド人はフィンランド人のことを非常に信頼している)
その理由として、フィンランドの社会福祉制度は国民の誰もが安心して生活できるよう、人々ができる限り平等になるように作られています。
また、政府は協議制なので、みんなが議論して結論を出して決めるという文化がフィンランドで根付いています。
これらのことは最近のことではなく、フィンランドの歴史の中で長く行われてきたのです。
そのため、お互いに信頼し合う文化の基礎があるため、テレワークになると従業員はさぼるのではないかという考え自体があまりないわけです。
ワークライフバランスへの強い意識
もう一つの理由は、「ワークライフバランスへの強い意識」です。
OECDの調査では、2018年フィンランドで週に50時間以上働いた人はわずか3.9%です。
日本に比べなくても、これは世界的にもかなり低い数字です。
もちろん、これは単なる「意識」だけでどうにかできることではないです。
労働関連法律の改定、強い労働組合の存在なども後押しになっています。
その結果、フィンランド人はみんな自分の時間を大切にし、休むべきの時間にしっかり休む文化が根付くようになっています。
夏休みになると、みんな休むのです。
もちろん、電子社会のフィンランドでは様々な手続きはネットで完結しますので、窓口へ足を運ぶことが日本よりも断然に少ないです。
更に、はんこ文化もないので、電子署名や電子認証が日常的に行われていることで、テレワーク・在宅勤務も圧倒的にやりやすいでしょう。
これらもフィンランドのテレワークが浸透しやすい理由になっているでしょう。
もちろん、テレワークの普及がもたらすのはメリットばかりではない
テレワークの普及は様々なメリットをもたらしますが、それだけではありません。
多くの人がテレワークを利用すると、情報の交換や同僚間の繋がりが弱まる可能性があります。
同じチームのメンバーは最近どうなのかの情報交換が難しくなります。
コーヒーブレークやランチタイムでの情報交換もできなくなります。
更に、常に家で働くことでビジネスや事業の動きに対する感覚が鈍くなる恐れもあります。
いくつかの課題も存在しているが、コロナ流行後にテレワークはフィンランドと日本で定着するか、オフィス勤務に戻るか、どうなるかを見て行きたいですね。
参考:平成29年度 テレワーク人口実態調査 平成30年3月 国土交通省
参考:パーソル総合研究所 「第四回・新型コロナウイルス対策によるテレワークへの影響に関する緊急調査」
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