「透明性、具体性、信頼性」北欧小国フィンランドのコロナウィルス救済策・補助金対応から見る「国の強さ」とは?

公開日:2020年4月13日  関連分類:

 

コロナウィルスの感染拡大により、我々の生活が著しく変わり、経済活動でも大きな影響を受けています。

そうです。

我々個人個人の収入も影響を受け、減っているのです。

 

キートスショップに通じて観光事業を展開する筆者もその大きいな影響を直接受けている一人です。

 

フィンランドは3月中旬から国境を閉鎖し(5月末まで継続予定)、日本との直行便は1日5~6便を飛ばすフィンエアーでも1日1便まで減便し、6月末まで回復しない予定です。

レストラン、サウナなどの公共施設は5月末まで閉鎖予定。

 

 

もちろん、このような状況では筆者の観光事業は「全滅」です。

そうなんです。

観光事業は「半減」とか「9割減」とかのレベルではなく、「10割減」です。

 

 

そこでフィンランドで事業を運営する筆者にとって最も重要視する国の対策の一つは「コロナウィルス関連救済補助金」です。

 

そのため、このテーマに関し、日本の関連情報とフィンランドの関連情報を日々追っており、その違いも目にしてきました。

 

 

何が違うかというと、まず一言でいうと「透明性」と「具体性」です。

そして、そこから生まれる政府に対する「信頼性」。

 

これらが本質的に国の強さの一つではないかと思います。

 

 

 

 

フィンランドでは対応窓口、救済金額、申請方法が明確的

まずお見せしたいのは一つの表です。

 

 

 

こちらはフィンランド政府が民間企業に対して補助金や支援金を提供する際に対応窓口を明確にする一覧表です。

 

1人のみの個人事業者、フリーランス(アーティスト、屋台経営含む)の相談窓口は地方政府(市)もしくは取引先銀行です。

1~5人の小企業の対応窓口はELYセンター(国営機構)です。

5~250人の小中企業の対応窓口はBusiness Finland(国営機構)です。

それ以上の大企業は主にFinnvera(国営金融保証機構)と取引先銀行が窓口です。

 

 

一つの表で自分はどの機構に問い合わせして補助金を申し込めばいいのかがわかるでしょう。

 

 

 

 

フィンランド政府が提供した支援策に補助金額も明確的

フィンランド国営放送YLEがまとめた記事に国からの支援策及び救済金額も明確に掲載されています。

 

 

一人の個人事業主やフリーランスなどの方はまず地方政府に2000ユーロ(約26万円)の直接現金補助を申し込むことができます。

 

 

筆者が運営するような1~5人の小企業は二つの種類の救済補助を申し込むことができます。

  • 社員1名あたり2000ユーロ+50%間接費用補助(ただし、企業側は20%費用負担)、補助金額は最大1万ユーロ(約130万円)
  • ビジネス再建補助、提案内容により最大10万ユーロ補助(1300万円)

 

 

 

 

救済補助金の意味は救済だけではなく、未来に向けて成長への準備も

キートスショップの観光事業はコロナウィルスの影響により、大きいな減収となっているため、筆者もフィンランド政府の救済補助に実際に申請しました。

 

ELYセンター(フィンランド語:Elinkeino-, liikenne- ja ympäristökeskus、英語:Center for Economic Development, Transport and Environment)のホームページには公用語のフィンランド語、スウェーデン語はもちろん、英語、サーミ語、ロシア語のページもあり、外国人への配慮も感じられました。

 

 

筆者が運営しているような1~5人の小企業が申請できるのは二つの種類の救済補助金です。

  • ビジネス現状分析救済補助金(補助金額最大1万ユーロ、約130万円)
  • 事業開発救済補助金(補助金額最大10万ユーロ、約1300万円)

 

 

この二つの救済補助金の申請に提出する必要がある書類を見ると、国からのメッセージは明確的でわかりやすいです。

「今はコロナウィルスの影響で収入が大変だけど、生活のためにお金あげるから暇な時間をうまく使って自分の事業状況を分析し、この困難を乗り越えて未来に成長できるような事業プランを作ってね。」ということです。

 

 

「ビジネス現状分析救済補助金」は約1か月の期間を使って自社のビジネス現状を分析してほしいという目的であげるお金です。

つまり、自分の事業はレストランであろう、観光サービスであろう、交通運輸業であろう、今はどのような状況で今後どうすべきかを今一度振り返ってしっかり把握してほしいということです。

 

 

実際にもらえるお金の計算は社員数に直接関係します。(つまり、間接的な賃金補助であり、解雇しないでほしいということです)

 

例えば、社員二人(起業者含め)の場合、ひとり2千ユーロ+50%の間接費で計算され、合計2000×2=4000ユーロで、間接費が4000×50%=2000ユーロで、合計6000ユーロとなります。

国から補助されるのは80%なので(企業側は20%を負担)、実際にもらえるお金は6000×80%=4800ユーロです。(約62万円)

 

そして、このうち4200ユーロ(約55万円)(70%)は事前に支給されます。

残りの7万円は事業分析報告書が完成し、提出された後に支給されます。

※ユーロ=130円

 

 

もちろん、救済補助金の実質な意味は「解雇せず、雇用の継続」及び「生活費の補填」であるが、お金をもらって休業して家でゴロゴロしていいよ!というわけではなく、家にいてもちゃんと今後の事業成長のために分析なり、計画なり、仕事してね!という意味も含まれています。

 

 

 

 

救済補助金はもちろんオンライン申請、現金振り込み

すでに電子化社会になっているフィンランドでは、もちろん救済補助金の申請はネットで行われ、支給も現金振り込みでもらいます。

 

フィンランドではすでにマイナンバー制度が普及しており、銀行から発行された個人ネットバンキングアカウントとパスワードで公的なサービスにアクセスすることができます。(ネットで個人の本人確認証明ができる)

 

 

今回のコロナウィルス救済補助金申請も同じく、ELYのサイトにアクセスし、救済補助金のページに行けばそこからログインしてネットで情報を記入して申請書を送ることができます。

 

結果の通知はメールで来るし、補助金の支給は直接銀行口座に振り込まれます。

 

 

どこかの窓口に行く必要がなければ、どこかで並ぶ必要もありません。

特にこの時期では効率うんぬんより人間の接触による感染のリスクを最大限抑えることができるので、電子社会の強みがもう一つここで発揮されます。

 

※もちろん、紙での申請手続きも可能ですが、各自申請書ファイルをダウンロードして印刷し、記入後に郵送することが勧められています。できるだけ窓口に来ないように呼びかけられています。

 

 

事業者ではない個人は失業保険にカバーされ、若い家庭には別途月9万円支給

コロナウィルスの影響期間中に、国から国会へ特別議案が提出され、承認されたことで、特例措置も取られています。

 

 

一般従業員は失業になると失業保険から失業補助金をもらうことができ、これで最低限の生活を維持できます。これは一般的な状況においても、コロナウィルスの影響を受けた状況においても同じです。

※フィンランドの失業補助金の詳細:フィンランドの失業補助金 日本よりもいい!?

 

 

しかし、個人事業主は事業を閉じる手続きを行わないと失業保険にカバーされません。

今回フィンランド政府は特例措置を取り、個人事業主は事業を閉じなくても失業補助金にカバーされるようになります。

 

 

更に、10才以下の子供を有する家庭には特別に月に723ユーロ(約9万円)の補助金が提供されます。

小さい子供の扶養に不安を抱え、収入も極めて不安定なこの時期に心強い援助と言えるでしょう。

 

 

 

 

予想外の強さ「透明性」:情報の開示

ここまではそこそこちゃんとやればどこの国もある程度できるはずでしょう。

 

しかし、筆者が驚いたのはフィンランド政府もしくは機構の情報開示の透明性です。

 

 

筆者が救済補助金を申し込む相手先がELYセンターです。

ELYセンターのホームページに救済補助金の進行状況が開示されています。

 

 

救済補助金の申請は3月31日から可能で、審査は4月7日からでした。

 

4月9日まで救済補助金の全国累計申請件数が10401件。

その中で許可されたのは4月9日まで298件で合計390万ユーロ(約5億円)

※4月14日朝9時には許可件数926件、合計1114万ユーロ(約14億円)。
※4月15日朝9時時点で申請件数12254件、許可件数1296件、合計許可金額1509万ユーロ(約20億円)
※4月16日15時時点で申請件数13291件、許可件数1713件、合計許可金額1892万ユーロ(約25億円)

 

 

この申請状況・審査状況は「毎日更新・公開」されるのです。

 

 

地域別の申請件数、合計申請金額、許可件数、許可合計金額などの情報もオフィシャルサイトに開示されています。

なので、審査の合格率も計算できるので、透明性がとても高いと感じます。

 

政府からの救済資金がどのくらい民間に浸透しているかもわかりやすいでしょう。

 

 

公平性より合理性を重視するフィンランド文化

「公平性」と「合理性」のバランスについて、日本文化とフィンランド文化の一つ大きいな違いであると筆者は強く感じています。

 

日本ではいかにも公平性が重視されるに対し、フィンランドでは合理性を中心に置きます。

 

 

教育現場から見れば、日本では「正解」が必要で求められます。

なぜなら正解がないと公平性が失われ、公平的な競争が成り立ちません。

 

 

フィンランドの教育現場では公平性より合理性が求められます。

生徒はどのくらいできているかはすべて正解で判断されるわけではありません。

 

一部は先生の主観的な評価で判断されます。

もちろん、100%公平的とは言えません。しかし、生徒がどのくらい勉強し、どのくらい成長し、どのくらいできているかを「正解」で判断できないことが多いです。その正解で判断できない部分を一番知っているのは先生ほかありません。その先生が評価するのです。

公平性を一部犠牲することで、合理的に考え、教育現場で生徒が本当に必要としているのは何かを考えることができ、より教育の本質に近づくことができるのではないかと思います。

 

 

今回の救済補助金申請も同じように感じます。

 

 

日本では「収入減」が救済補助金の判断基準であり、収入減を「証明」しなければいけません。

でないと判断基準がわからなくなり、誰でも救済補助金をもらえるようになり、公平性に欠けます。

 

 

しかし、フィンランドではやはり合理性を重視します。

とりあえず収入減を全員が証明する必要がありません。

申請をすべて個別で審査するので、個別の申請内容に応じて証明資料を別途請求したりします。

 

実に非常に合理的です。

 

3年も5年も前からレストランをずっとやってきた会社に収入減を証明する資料を求める必要性はそもそもないです。

しかし、2020年3月に開業したレストランでしたら、より詳しい資料が求められるでしょう。

 

ネット上でも資料が揃っている外国人向けの観光サービス業者に収入減を証明する資料を求めても意味がありません。

なぜなら外国人の入国自体禁止されているからです。

もちろん、自社サイトに観光サービスの情報が少ないなら、追加資料が要求される可能性は高いでしょう。

 

 

全員一律に証明することを求めず、柔軟に対応するのはフィンランドの合理性文化です。

 

 

 

 

もちろん、完璧なシステムは存在しません。フィンランドでも課題は山積み

フィンランド政府は様々な救済策を打ち出したが、それでもセフティーネットから漏れている人は必ずいます。

 

例えば、税金を滞納している人は救済補助金をもらえないとか。

救済補助金は全く足りないとか。

理由がわからず補助金が下りないとか。

 

 

申請件数1万件以上ある(ELYセンターのみ)ので、1日100~200件の審査スピードでは多くの中小企業は待っている間に倒産してしまう問題とか。(4月14日にはスピードアップされ、1日で370件を許可した)

 

 

大事なのは完璧なシステム(もしくは対策、考え方、行動)を期待するのではなく、他のシステムを参考にして自分のシステム(もしくは対策、考え方、行動)を改善することです。

 

 

まとめ:個人ベースで今一度別の角度から考えてみてもよいのでは?

国や環境が違えば考え方ややり方が違うのも当然です。

 

しかし、今まで当たり前のように考えてやってきたことがこれからもそのままでよいのかを考え直してみるには参考対象・比較対象があるとやりやすいと思います。

 

 

国全体や環境を変えるには無理のある話かもしれないですが、個人ペースや自分の所属する小さい組織であればそれほど難しくないかもしれません。

 

今一度考えるきっかけになることができれば幸いです。

 

 

情報出典:

 

 

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1.フィンランド 北欧というと?

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「フィンランドと日本の交流を促進し、人々により幸せな生活をして頂く」という目的を果たすため、キートスショップ現在は「フィンランド雑貨販売」と「ヘルシンキ現地ツアー」の2軸で事業を展開しております。フィンランドの雑貨が好きな方により良い製品、より早く、より良い価格でご提供し、フィンランド雑貨をお客様が手に取る際の喜びを想像しながら事業を運営しております。また、実際にフィンランド・ヘルシンキまで旅をされた方々にはフィンランド文化の核心価値を実際にご体験頂けるヘルシンキ現地ツアーをサービスとしてご提供しております。

「キートスショップで買ってよかった!」「キートスショップのツアーに参加してよかった!」というお客様の声を糧に、より良い商品を提供できるよう、より良いツアーを提供できるよう進めていきたいと思います。

3.運営に「誠実」と「感謝」

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