前回の記事でフィンランドの医療・診察費用の負担額について説明しましたが、今回は「診察」ではなく、「薬」の費用について説明していきたいと思います。
税金負担が高く、社会福利制度が整っていると思われているフィンランドですが、果たしてフィンランドで生活する人々は医薬品費用の自己負担がどのくらいあるのでしょうか。
日本の国民健康保険と自己負担額
フィンランドの状況を見る前に、まず簡単に日本の国民健康保険と自己負担額の内容を少しさらっておきましょう。
日本は国民皆保険の制度を採用し、日本に住んでいる人であれば、国民健康保険に入るのは義務であり、権利でもあります。
そして、政府は全ての医療行為(診察、手術、処方箋の作成など)とすべての薬や医療機器のそれぞれに「値段」を付けています。
それで、病院も患者も製薬会社もこの決められた値段を元に医療サービスを提供し、患者からお金を徴収します。
もちろん、この「値段」は政府が独断で決めるものではなく、医学界、製薬業界や専門家たちで話し合ったうえで決めるようです。
現在一般患者の医療費用負担割合が3割となっています。
どんな医療サービスでも薬でも一律3割負担です(一般患者の場合)。
例えば、風邪で家近くのクリニックに行ったとして、診察費用と薬費用が1万円かかった場合、患者負担が3千円となります。(診察費用や薬代が3千円なのか、5千円なのか、1万円なのかを決めるのは国です)
フィンランドの医薬品費用と自己負担額
フィンランドは日本と同じく国民皆保険のシステムを導入しており、フィンランドに住んでいれば誰でもフィンランドの国民健康保険(KELA)に入る義務も権利もあります。
※厳密にいうとKELAは国民健康保険ではなく、社会保障制度の総称です。
しかし、フィンランドでは国がすべての医療サービスや薬などに値段を決めていません。
医療サービスの費用は「フィンランドの医療費、どのくらいかかる?」をご参考頂ければと思います。
薬の費用の自己負担額は「条件によって変わる」のです!
少額の医薬品費用は100%自己負担
年間の薬代が50ユーロ(6500円)を超えない場合は100%自己負担となります。
国民健康保険なのに100%自己負担はおかしくない?と思う方もいるかもしれませんが、「できるだけ医療資源を必要とする人へ使おう」というコンセプトがベースにあるかもしれません。
「年間」で考えれば6500円の薬代はそれほど重い負担にはならないでしょう。
それで節約された税金を本当に必要としている人に回すことができますね。
ちなみに満19歳以下の子供たちの医薬品費用には100%自己負担の部分がありません。
自己負担額の割合は「薬の種類」による
6500円を超えた部分の医薬品費用の自己負担額の割合は薬の種類によります。
薬の種類によって自己負担額が60%、35%と0%の3種類となります。
一般的な薬は自己負担額割合60%です。
低負担額と特殊低負担額の薬はそれぞれ自己負担額割合35%と0%です。
※0%でも毎回の薬購入で4.5ユーロ(約600円)の手数料が徴収されます。
医薬品支出費用年間上限額
フィンランドでは医薬品支出費用に「年間上限額」が定められています。
2018年の年間の薬代の上限額は「605.13ユーロ」(約79000円)です。
つまり、処方された薬で年間費用が79000円を超えることがありません。
※ただし、上限額を超えても薬を買う度に手数料2.5ユーロ(約300円)は徴収されます。
フィンランドの医薬品費用負担システムは薬をたくさん必要とする人にやさしい
小さい病気やたまにしか薬をもらわない人には全ての薬代を負担してもらうこと。
そこそこ薬が必要な人にはそこそこの割引をすること。
毎日もしくは大量な薬が必要とする人には年間薬代上限79000円まで。
筆者から見ると、もしかしたらこのシステムは日本の一律3割負担よりいいかもしれません。
医薬品費用が少額であれば患者に全額負担してもらうのもあまり大きいな負担にならないし、税金の節約にも繋がります。
節約した税金を病気がひどい人に回すようなシステムですね。
日本では医療費と医薬品費用の上限を設ける制度「高額療養費制度」がありますが、上限を設定する期間は「一か月」なので、実質年間上限が120万円前後になります。
この点から考えると、フィンランドの医薬品費用負担システムはより病気のひどい人にやさしいシステムですね。(もしくは薬大好きな人にやさしいシステム?)
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