近年フィンランド教育は世界で名高く、毎年海外から多くの教育関係者がフィンランドの学校、教育現場を視察に来られます。
日本からも多くの方々が毎年フィンランドの学校を訪ねています。
フィンランドの教育で日本の教育と違うことを言えば、教育は完全無料、塾がないことやストレスが少ないなどがよく言われています。
その背景にある理由も教師の質、国の教育制度、国の教育予算など様々あります。
しかし、フィンランド在住の筆者から見ると、フィンランドと日本の教育は様々な理由で異なるが、最終的に本質的に二つのことに起因します。
「評価」と「信頼」です。
※本文はあくまでも筆者一個人の意見ですので、一つの参考としてお読み頂ければと思います。
社会が教育に対して評価する方法が違えば教育全体が変わる
教育に対する評価の仕方は生活教養、礼儀、道徳、能力、就職率など様々ありますが、一つ最もわかりやすいのは「就職」です。
「仕事につくことができ、且つその仕事で学んだことを生かすことができる」ということが教育に対する評価の一つだと筆者は思います。
このことができるかどうかの一つ重要な要素は「会社の入社選考プロセス」に直接関係します。
日本の場合、就職活動の特徴には「一斉就職活動」「大学学校名ランキング・ブランド力による選考」などが挙げられます。
となると、会社側は求人活動において効率化・コスト削減を求めるため、ひとり一人の能力や何ができるかを詳しく見る前にまず大学の学名で一次選考を行うことがあります。
となると、社会全体に「有名な大学に入るのが重要」という概念が生まれます。
次に有名な大学に入るには試験で勝ち抜くしかありません。
有名な大学に入れるかどうかにかかわるため、「公平性」を重視する「標準的な答えのある試験」しか実施できません。
結果的に、教育の現場で最も重要視とされることが自然に「暗記力を鍛え、標準的な答え(正解)のある試験で高い点数を取る能力」を高めることの1点になります。
しかし、良く忘れられることは、高い暗記力を持って正解のある試験で高い点数を取る力を小中高で何年間もかけて磨いてきても、その力は「大学入学まで」しか使えないことがあまり認識されていません。
なぜなら、「この世のほとんどのことに正解がない」からです。
人生においてはほとんど正解がありません。
- 今の仕事を続けるべきか、やめるべきか
- この同僚との人間関係をどう処理すべきか、どう進めていくべきか
- 安定を求めて公務員になるか、夢を追いかけてミュージシャンになるか
ビジネスや仕事においてもほとんど正解がありません。
- 営業でより高い数字を取るにはどうすべきか
- マーケティング企画でどういうテーマがいいのか
- 国内市場に集中すべきか、海外進出すべきか
お気づきでしょうか。
暗記中心、正解を答える力しか育たない教育が役に立つのは大学入学の時までです。
大学を卒業してから社会人になり、自分の人生を歩む50年の人生において、本当に大切な力は「正解のない質問に自分なりに答えを見つけ出すこと」なのです。
大切なのは「何ができるか」
フィンランドでは一斉就職活動がありません。
大学を卒業するタイミングはバラバラです。(学期中でも卒業できます)
そのため、会社の人事担当が効率を求めて出身大学の学校名だけで一次選考を行うことが一般的にありません。
そして、フィンランドの会社では通常試用期間→1年契約→契約更新というステップで雇用を行います。
そのため、「契約不更新」ということで従業員を解雇することができます。
つまり、学歴がいかにきれいでも、実務能力や問題解決能力がなければ契約不更新になる可能性が高まるのです。
このような背景から、フィンランドの学校教育も暗記や正解を覚える能力より、「正解のない問題に取り組む能力」が重視されるわけです。
正解のない問題に取り組む能力を育てるには教師への「信頼」が必要
「正解のない問題に取り組む能力」を育てるのはとても難しいことです。
なぜなら、その正解のない取り組む「能力」をどう評価するかは至難の業です。
正解がないからこそ、この結果がよかったのか、その結果がよかったのか、すべての結果がよかったのかわからないですよね。
このようなことだからこそ、「教師のプロフェッショナル」を信頼するのが大事です。
職業が教師で教育のプロだからこそ、正解のない問題に取り組む能力に対する評価ができるはず、教師は我が子の力を最大限伸ばしてくれるはずとフィンランド人は先生を尊敬し、信頼します。
もちろん、一言「信頼」だけでいいわけではありません。
フィンランド国民が教師に信頼する背後にあるのが「教師になるのは競争が激しくて難しい」「教師になるには最低修士学位が必要」「教師は先生になってからも継続的に学び、力を磨く」などの要素や理由がフィンランドに存在しているからです。
このように、フィンランドの生徒は学生時代に何年間もかけて「正解のない問題に取り組む能力」を高めるトレーニングが行われ、社会人になってからもその力を発揮し続けることができます。
ということから、教育の姿を決めるのは「評価」と「信頼」と言っても過言ではないかもしれませんね。
※もちろん、この記事で述べたのは一般論であり、すべての個人やすべてのケースに適応するわけではないことをご理解ください。
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